【第7回】教育訓練とコーチング
教育訓練とコーチング
教育や訓練の場に、コーチングは適するか・・・
コーチングとは、手っ取り早く言えば、
- あるべき姿(なりたい姿)を明確にし
- 現状とあるべき姿のギャップを認識し
- ギャップを埋める道のりを具体化し
- 実現可能な、今とるべき行動を共有し
- その行動の持続を支援する
コーチと目標を目指す方(クライアント)とのかかわり方を示す技法です。
名選手は名コーチと同一ではないことは、ご存じのとおりで、 コーチは『そのものができる』『クライアントの目指す分野での専門知識がある』ことが必須条件ではありません。
ただ、コーチングは、
もともと、組織内での人材育成より、出来る人材を確保する風潮の強い欧米において、 自分を高く売るために、自費でコーチを雇って自分を高めるシーンで、生まれ育った技法ですから、
基礎から教える学校などでの教育分野で活用するには、3本立ての意識が必要なのではと考えています。
- 1.興味を持たせるためのあるべき姿の情報や事例伝達
- 2.教え、反復訓練する行動支援
- 3.信頼と期待を伝え、使命感を育てるモチベーション維持
ここで異質なのは、2.の訓練部分です。
本来異質なワケではありませんが、
コーチングの方針から考えると、ここで大きく間違う指導者が多いようです。
何のために訓練するのかや教え方の工夫をさておき、 何故、言われたとおりにしないのかという怒りを持って懲罰で従わせる と言った、指導するひとを喜ばせ満足させることが目的でもあるかのような方向に向かうこともございます。
乱暴な言い方かもしれませんが、昨今ニュースで聞く、『躾のための虐待死』などは、その究極の姿であるような気が致します。
生粋の体育会系である私は、先日の柔道の世界選手権で、篠原監督が選手に気合い入れのビンタをする姿に、愛と情熱を感じる方ですし、ゲンコツやパシンっ!って教育も受け入れる派なのですが、
要は、それが、指導される側(クライアント)の成長を促進するために、本当に有効な指導かどうかだと考えます。
相手を傷つけるための言動ではなく、相手を伸ばすための言動であることを 目的とすると、
『おまえならできる』
『これをやるとステップアップする』
『一緒に○○を達成しよう』
という信頼関係がベースになければいけません。
そして、成功体験を持たない相手には、疑似成功体験を作ってあげることも、効果的です。
たとえば、心遣いやひとを喜ばせることを知るためには、台本を提供して、
- ご両親に感謝の言葉を電話(やんちゃさんほど、ご両親は、泣くほど喜ばれるようです)
- お客様から褒められるシーンをつくるとか(サクラでもOKですが、本人には内緒です)
教育訓練分野には、相手の資質や知識を前提にしたコーチングはマッチしないのでは・・
というご意見を頂くこともございますが、
そんなときは、
指導する側から指導される側に主役を移すという観点で指導するために、 また、直視的でない効果を第一に考えた指導を実現するために、 コーチングの技術をお取り入れくださいとお応えすることにしております。
直視的でない効果とは
- 教えられたことだけでなく、応用や他の課題への転嫁ができる
- 課題解決の仕方を学ぶ
です。
おなかをすかせた人に、
- ★ 魚を恵む直視的支援でなく、
- ★ 魚の釣り方を教えることでおなかを満たす方法を教え
- ★ 他のおなかを満たす手段に取り組む姿勢を学ばせる
ことができたら、これは、指導者としての幸せの極みだと思いませんか?